「黒字にしたい会社」とは、主に上場企業であり、一部の中小企業である。
上場企業は、「利益」の額が株価に直結するために、できるだけ多くの利益を計上しようとする。
特に自社株を担保に金を借りているような企業は、黒字化に必死となる。
株価が下がれば即、担保価値が下がるため、それを補填するため、新たな金策に走らないといけないからだ。
利益を高くするには、「売上」を増やすことと「費用」を減らすことの2つがある。
代表的なのは、架空取引や関係会社との親密な取引である。
期末ギリギリに大きな「取引」をでっちあげ、翌期になればスグに解除すればいい。
これらを繰り返せば、名目上・数字上の「売上」は増える。
大体倒産する企業や粉飾決算をしている企業は、第四4半期だけ売上が過剰に計上される。
費用がそのままなら、意図的に増やした売上の分だけ、利益は増える。こうやって「粉飾決算」をするというわけだ。
先に一部の中小企業も、黒字を求めると述べたが、それは、借り入れや公共事業にかかっている。
銀行は赤字の会社には金を貸さないし、赤字になれば返済を迫るので、会社としては、どうしたって「黒字」を達成しようとする。
公共事業に参加する(入札する)には、黒字であることが条件なので、会社としては、「黒字」へと操作するという塩梅である。
黒字にするには、費用を減らせばいい。代表や役員の役員報酬や役員賞与、手当てを減らせば、その分だけ、黒字になる。
棚卸資産も、費用の過少計上の温床である。
というのも、棚卸資産の評価は、企業自体が行う。
また、棚卸資産の細かな計算方法や評価方法は、法や規則で決められてもいない。
わかりやすいものならいい。市場価値がほとんど変わらないものならいい。
誰でも評価できて、「恣意」を排除できるからである。たとえば、大根やにんじんの評価は、かなり正確にできる。
しかし、そうでないもの、評価に専門性が必要なものとなると、「恣意」を排除できない。
たとえば、服。
フリルが一枚付いているかどうかで、または、色がどうかで売上が激変するものであるから、評価は実に難しい。
というよりも、いくらでも「恣意」が入る。
今期は黒字化したいというのなら、棚卸資産の評価を「高く評価」する。
そうすれば、売上原価が少なくなる。売上原価が下がれば、売上総利益は増える。
逆に赤字にしたいなら、反対のことをすればよい。
「売上」-「売上原価」=「売上総利益(またの名を粗利)」は、会計の常識なので知らない人は暗記しておく。
ビジネスニュースとかで、「棚卸資産」の増減に注目するときがあるが、上記のような背景があるからである。
棚卸資産が増えに増えている企業は、まず、「作っても売れないから在庫が残りまくっている」と「過大に評価して益出ししまくっている」ことが読み取れるわけである。
企業の立ち位置によって、「赤字」志向と「黒字」志向の相反する方向に進む。だから、粉飾決算はややこしくなる。