脱税というのは、主に、密告や通報から端を発して、税務署に発覚することが多い。
「脱税は得てしてばれる。だから、正しく納税しよう」とよく言われるが、蓋し、事実である。
というのも、会計操作や帳簿の改ざんなどは、つっこんで調べられたら必ずばれるからである。
しかし、「調べたらばれる」からといっても、税務署は全ての企業の帳簿やら証票を調べることは、物理的に、時間的に、人員的に、とてもできることではない。
だから、税務署は、調べるに値する怪しい企業を選別することになる。
「調べるに値する」とは、たっぷりと脱税していて隠し資産が多く(つまり、税金を払う事ができる)、調査さえすれば、いくらでも追徴できる企業という意味である。
当該調査企業の選別の際に、大きな威力を発揮するのは、密告や通報、そして、うわさである。
密告や通報は、特に同業者からが多いという。
そらそうで、その事業を一番よくわかっているのは、同業者である。
「同じような品揃え、同じような値段、同じようなサービス」で商っていて、なんでアイツ・アソコだけはあんなに羽振りがええねん、となる。「そんなわけないやん」ってな塩梅である。
実体的にも、よほど良客を抱えている、がっちり商圏を確保している、他者には真似できない商品やサービスがあるといった事情があれば、経営の差は出る。
しかし、そんなことは稀である。
ほいじゃどうしてあんなに羽振りがいいのか、となれば、「脱税?」と話が進む。
ま、単に、うまくいっている僻みと嫉妬とが、密告や通報の原動力になっている。
「領収書をくれ」といってくれなかった歯医者や飲食店を、できるだけ通報している「熱心な正義派」の人もいる。
税務署は、こうした通報や密告、うわさを大歓迎している役所でもある。
脱税は、税務署以外のところから、ひたひたと忍び寄ってくることは、知っておくべきだろう。
「沈黙は金」で、「慎みは徳」であるのも、納得できる。