どうして高齢者の投資詐欺が多いのか?高金利で育ったから。

詐欺師もマーケティングの時代である。この数年、若年層の投資詐欺を見聞きしたことがない。

あっても、出会い系の振込み詐欺や、寸借詐欺くらいである。

10・20代層の投資詐欺の少なさを見れば、彼らがお金を持っていないのは一目瞭然である。プロの詐欺師なら決して狙わない。

若年層への詐欺なんて、労力の間尺が合わない。だから、若者は、投資詐欺に遭わない。だからニュースがない。彼らは、『狙われてもいない』のだ。

とはいえ、高齢者なら、すべてが投資詐欺に遭うわけじゃない。おそらく、80歳代、90歳代の投資詐欺は少ない。

かの年代層で被害者となる人は、いわば認知症が進むなどで、能力的に判断ができなくなったが故に、詐欺に遭うように思われる。

ぼけちゃってよくわからなくなっちゃって、何でもOK・OKと話を飲んでしまうわけである。頭がはっきりしていたなら、決してイエスといわなかったろう。彼らは、論理的かつ理性的に、詐欺に遭っているのではないのだ。

対して、60歳代、70歳代の投資詐欺というのは、ある程度の納得が絡んでいる。年金を増やしたいとか、低金利だからプラスアルファしたいなど、意思と金利・利子・利息・利得を計算する能力を有しての、投資詐欺なのである。

詐欺師は、先の80歳代・90歳代は、ボケないと騙せられない・詐欺を果たせられないのに対して、60歳代・70歳代は詐欺師のトークと腕とで、騙せるのである。この点が違うように思われる。

今の80歳代、90歳代は、1920年から1930年生まれ

わたしは、西暦の「1945年」を1つの区切りとして見ている。世の中がひっくり返ったときだからだ。

今の80歳代、90歳代は、1920年から1930年生まれである。ということは、「1945年」のときには、15歳から25歳の年齢となる。昨日まで「白」だったことが、8月15日の次の日には、「黒」に、ひっくりかえった日を経験している。

アレほどエラソウニしていた人が、そこ日を境にコソコソするのを、言っていることが180度変わるのを見てきたのだ。俺も・私も実は嫌だったんだよ、ほんとはおかしいと思ってたんだ、と弁解しているクソを見ただろう。

戦争の記憶も生々しく、預金閉鎖も経験している。取り付け騒ぎも肌で知っている。徴兵保険のばかばかしさも、話で見聞きしていただろうし、理解もしていたであろう。関東大震災の体験談を、祖父や祖母から聞いてもいただろう。世は無常なのだ。

だから、この年代層は、そうそうに「何か」を信じない。

銀行は潰れるものと知っている。美空ひばりのように、お金は銀行に置かず、縁の下に隠しただろう。いつ潰れるかわからない銀行よりも、たんす預金の方が安全で、つまりゼロになるくらいなら実質プラス金利であったのだ。保険なんて、インフレ特則でもない限り、紙くずになることを知っている。たんす預金は、銀行が潰れる時代には、効率のよい投資であったのだ。減らないしなくならないから。

かの世代は、こういう生々しい記憶を持ちつつ、昭和という時代の中で、成人し、結婚し、家を持ち、子を育ててきた。世の中の「もろさ」を身体が知り尽くしている。だから、「騙しにくい」のである。

今の60歳代、70歳代は、1940年から1950年生まれ

今の60歳代、70歳代は、1940年から1950年生まれである。「1945年」のときに生まれていない人もいるだろうし、よちよち歩きで、少しも戦後直下の世の中が見えていなかっただろう。

物心がつくころには、完全に復興期に入っている。不況もあったが、おおむね好況で、金利は高かった。昔のことはタブーで、前進と将来が生き方として刷られていく。

護送船団方式の世界だった。銀行は潰れないし、潰れても国が保証する。経済は右肩上がりで、彼らが育ったのは、まさに「高金利」だけの世界であった。公定歩合が低くなったときもあるが、それでも「5%」である。そこからまたも回復して、9%や10%の線まで行きそうなくらいのときもあった。

わたし自身、思い返してみて、新聞広告でニッチョーやワイド、中期何たら国債といった金融商品が「7%」くらいで掲載されていたことを覚えている。現在からすれば、よだれが出る金利である。

参考:日本銀行「金利」

60歳代、70歳代の世代は、「金利」というものが、「高いもの」であることを前提に育ってきたのである。高金利の産湯で生まれ、高金利の水で磨かれ、高金利の空の下、育ってきたのである。彼ら・彼女らにとっては、現在の超低金利のほうが、異質に感じているだろう。

頭ではわかっているが、昔の蜜は忘れられない

60歳代、70歳代が、高い金利(5%~10%、20%)を謳う詐欺に引っかかるのは、そうした高金利が当たり前であったからだ。

ずうっと昭和の「高金利・高金利・高金利・高金利・高金利」ときて、平成の「低金利・低金利・低金利」と続いた。そこでひょっこり「高金利!」の話がきたら、やはり、あったか!と話に乗ってしまうだろう。やっと時代が帰ってきたかと思うだろう。俺は知らなかっただけなのだと、思うだろう。だからカモにされる。

60歳代、70歳代が、高金利の投資詐欺に引っかかるのは、逆を言えば、若い人たちが、「5%以上の金利があったんだよ」と言っても、ピンと来ないのと同じ背景である。

生まれたときから低金利の彼らは、んなわけないだろ、と突っ込むのである。金利というものは、1%を切るものだという時代に生きているから、「5%」や「7%」なんて数字を聞いても、ピンと来ないのだ。だから、若い世代は、「5%」やら「7%」「10%」やらの話の投資詐欺には引っかからないのである。

「1%」に慣れきった世代だから、「高すぎて」体感的に怪しいのだ。しかしといっては何だが、低い金利の反動なのか、「100%」や「1000%」の話に引っかかる人がいる。金利の高さが体感できないから、コロっと騙されるんだろう。

逆に60歳代、70歳代の人は、「100%」や「1000%」といった『怪しい話』にはひっかからない。それこそまさに、彼らにとって「詐欺」の数字だからである。彼らが騙されやすい金利は、まさに彼らが生きてきたときの金利(5%~10%、20%)なのである。

大昔のあるおっさんが、敵を知り己を知ればと、そして、汝自身を知れと、うまいこと言っている。

自分がどういう時代を生きてきたかは、投資上の必須の教養かと思われる。

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