グルーポンは、商売の目の付け所はよかったんだよ、と過去形で言われる日が来るだろう。

グルーポンへ注がれる目が厳しい。日本ではエステから訴えを提起されたりで、「よくない会社・グルーポン」「グルーポンおせち」に沿った報道ばかりがなされているが、本家アメリカの方はさらに厳しい。

個人的に、「グルーポンおせち」は、その取り扱い元の製造業者(バードカフェ?)が驚天動地の『ずさん』であっただけで、グルーポンに責任の多くを求めるべきではないと思う。グルーポンにとっては、災難であったろう。各民事訴訟については、単に経営者の商売能力が低いとしか思えない。

さて、アメリカの本家なのだが、厳しい。2010年度の売上は713,365,000ドル(約570億円)、前年比23倍とスゲエ躍進だが、純損失は390倍!の420,344,000ドル(336億円)であった。

参照:グルーポンがSECに提出したIPO用資料(6ページから7ページ)

戦略としては、営業に資本を集中投下して、先行者利益・先行者知名度を確保しよう、ということなのだろう。倍々ならぬ勢いで、売上は伸びている。販管費も同様に伸びてはいるが。

しかし、先は少しも見えないのである。ライバルとの競争が激化し、経営環境が著しく悪化しているからだ。

グルーポンは、後払い商法

WSJの記事によると、グルーポンのクーポン販売収入は、60日か70日後に、お店側に支払われるとのことなのである。つまり、グルーポンは、そのお店に支払うべき「お金」を手元に残しておけるわけで、それを元手に、宣伝広告費をかけ、営業チームを各地に派遣(投下)していっていると読み取れる。

簡単に言えば、グルーポンは、クーポンの売上金という潤沢なキャッシュフローと、後払いという高い流動性をもとに、経営を拡大していっているというわけである。

参照:Groupon’s Terms Not Endearing

しかし、経営は大赤字・大損失であって、下手をすると、いやもう「下手」になるだろうが、「お店」に支払うべきお金を手に入れるために、営業を次々にかけていくという、自転車操業になりかねないのである。

すばらしい商売-半額ならお試しに

グルーポンの商売は、すばらしいと思う。

リアルのお店、つまり、私たちの身の回りにはたくさんのお店がある。行ったことのないパン屋やケーキ屋はごまんとある。

しかし、それらのお店は、テレビコマーシャルはもとよりチラシで宣伝するわけにもいかない。お金がかかるし、なにより忙しい。

インターネットの黎明期は、小さなお店でも情報が発進できるので、新たなお客を呼べると考えられてきたが、通常、お店の経営者は、先の例でいえば、おいしいパンを焼くことに忙しかったり、職人のマネジメント、会計・税務、仕入れで手一杯であり、「ネット」まで手が回らないのである。回っていたら、逆に、お店のほうが心配だ。

扱っている商品やサービスには自信があるが、しかし、認知させる手段がない。リアルお店の店長は、パソコンやネットを勉強する暇もないし、専属の人間を雇う余裕もない。しかし、一度知ってくれたら、再度来店させる自信はある。

わたしたちにとっても、新しいお店と新しいパンやケーキ、おはぎ、商品、サービス、お料理は魅力的である。

が、新しいものというのは、なかなかに「心の壁」が大きい。高い金を払ってまずかったらどうしよう、というリスクを引き受けたくない気持ちは「大」である。

そこで、「半額クーポン」の登場なのである。半額なら行きやすい。心理抵抗は少ない。こんな風な背景から、グルーポンの商売は生まれたように思う。

「縁」というべきか、「惰性」というべきか、ある程度の費用対効果、つまり、この値段でこの味・ボリュームならいいでしょ、という経験があると、ほかの店を開拓するのが面倒なので、どっか食べに行く→じゃ、この前行ったあそこでも行こうか、となるわけで、お店とお客の接点を結びつける、ワンダフルな商売だと、わたしは考えるのだ。

ライバル続々参入。あのGoogleも

しかし、すばらしいからこそ、ライバルは次々と参入する。

有象無象である。大資本グーグルの「Google Offers」なる参入があるくらいで、いかにグルーポンの商売にすばらしさと魅力があるか、証左といえよう。

参照:Google Offers

グルーポンにとっては、実に苦しい。グルーポンは、クーポンの売上をお店側と折半(国によって6割、7割)するようだが、当然のことながら、新規参入組はそれを引き下げていくだろう。

先に述べた、お店側へのクーポン売上の繰延べ期間も、短縮されていく。うちは15日で、うちは5日ですよ、といった風に短縮されて、せっかく開拓した顧客層をごっそり、根こそぎ持っていかれない。お店にとっては、売掛金の早期回収は喫緊の経営課題だから、即、移るだろう。

顧客データは、クーポンを売っている「お店」そのものだから、グルーポンのサイト自体が顧客データの塊となってしまう。

グルーポンが「取った」お店だけに焦点を絞って営業をかける企業もあるという。

グルーポンは泣きっ面に蜂であり、卑怯千万であるが、わたしもやるだろうし、近江商人もやるだろう。商売的には正しい。

そして、参入障壁の低さである。どこぞの記事で読んだのだが、グルーポンのサービスを利用したら、その後1週間で他社オファーが200件以上もあったという。

グルーポンも認めているが、グルーポンはテクノロジーの会社ではない。そう、他社は容易に商売のシステムを「構築」できてしまう。つまり、低コストで参入できてしまい、どんどんとライバルがやってくるのである。

話は日本のことだが、グルーポンの広告かなと思ってよく見たら他者のとくぽ?とかの広告だった。そう、グルーポンは、その商売のモデル、発想のみならず、広告のレイアウト・コンセプトまでも真似されているのである。ああ!

バフェット的に言えば、投資不適格

バフェットは、2010年度レターの18ページ、真ん中らへんでこう述べている。

『Time is the friend of the wonderful business.』

参照:http://www.berkshirehathaway.com/letters/2010ltr.pdf

いい商売というのは、時が経てば経つほど儲かる。よくない商売は、時間が経てば経つほど新規参入が増えて(行き渡ってしまって)、うまみがなくなるよ。というわけである。

グルーポンは3年目にして、時が「敵」となったのである。

だから、グルーポンは、バフェット的には、不適格な投資対象となるだろう。ま、毎期赤字だし、黒字化する見通しもない。わたしも買いはしない。

が、何が起きるのかわからないのが、この世の常である。奇跡的に盛り返すかもしれないし、長い消耗戦を勝ち抜き、そして耐え抜き、ネットとリアルのお店のキューピット役から「大天使ミカエル」になることも否定できない。

もし、FACEBOOKが買ったら、アップルが、MSFTが、とも考えられる。

「それ」単体のみでは生き残れないが、あるものの『1部門』としてなら、十分にパワーを発揮することは可能である。

基本ダメになるだろうが、まだわからない。個人的に、商売の発想とその挑戦をすばらしく思うから、生き残って成功してほしい。そして、わたしたちの生活を変えてほしい。が、買いはしないし、株式に魅力はない。

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