本書の特徴「賢明なる投資家」の特徴を一言でいうと、読むと賢明になることです。「賢明なる投資家」を読んだ人は、間違いなく「賢明」になります。アタマの良くなる本、記憶力が伸びる本、速読術、etc・・・世の中にはいろいろな能力開発書籍がありますが、この「賢明なる投資家」には適わないでしょう。めずらしく、看板に偽りがない一冊なんです。また、訳もスムーズでストレスなく読める名翻訳本です。

バフェットとグレアム
バフェットはリスクについて、「リスクとは自分が何をしているのかわからないこと」と明確且つ単的に表現していますが、この言はベンからの影響があったからだと思います。
バフェットの発言の節々にベンの姿を見てしまうのはわたしだけでしょうか? この「賢明なる投資家」を読む前に数冊のバフェット本を読んでいましたが、やはり、ベンはバフェットの先生であり、バフェットはグレアムの生徒だったのだったのだなぁ、と改めて納得しました。
バフェットの銘柄選択術(別窓表示)で紹介されているバフェットの銘柄選択の基本形についても、賢明なる投資家を読めば、その原型とも言うべき分析がここにあることを発見するでしょう。
「ベンジャミン・グレアム」と「賢明なる投資家」は、それだけ影響力のある人であり、著作であります。

安全域(margin of safety)
さて、グレアムの株式投資の手法見ていく中で、はずせないのはこの安全域(margin
of safety)の概念でしょう。この安全域の概念は、簡単です。
清算価値(今の現状のまま会社を解散したときの価格)以下の値段でその会社の株が売られているとしたら、非常に大きな安全域がありますよね。明らかな乖離がそこに存在してますね。
このような状況の株を多数買ってポートフォリオを作成すれば、かなり安定した投資収益生み出すとグレアムは言います。
( この多数の企業の株、というのがポイントです。有名な話、バフェットの買ったバークシャーは帳簿価格より市場価格のほうが安かった非常に安全域の高い買い物でした。確か簿価15ドルで株価が8ドルであった気がします。ですが、もし、このグレアム的安全域理論でバークシャーを買ったとしたら、面白くない結果に終わったでしょう。バークシャーはバフェットがCEOになり、繊維事業から投資事業へ変わったからこそ、生き延びたのであって、従来の繊維事業を続けていたら、まず国内国外の競争に負けバークシャーへの投資は元本割れする可能性もあったのですから。ですから、多数の割安企業群でポートフォリオを組むように、とベンは記述してるのだと思います。)
「安全域は常に支払う価格によって決まる」
・・・ベンは安全域を、このようにすばらしく簡潔に表現しています。この「安全域」を拡大・発展させて、企業の将来的な利益をもとに安全域を設定する投資を行うようにしたのが、バフェットなのです。
(※ ベンはバフェットのように、企業の将来価値を重視していませんでした。それよりも企業の有形資産など目に見える数字を重視していました。これは仕方のないことですが、それほどベンの生きてきた証券の世界が、将来もこの収益を存続することを前提に将来の利益を予想して、株式に高値をつけて崩壊していく様を見てきたのだろうと考えます。本書にもいかに成長力があろうとも高値で株を買うことの危険性が何度も何度も記述されています。)

あなたが賢明なればよい
バフェット流の投資は万人にできるものではないのです。みんながみんな、コーラを片手にして事業報告書に囲まれた生活をしているわけでもないのです。いわば、バフェットはグレアムのいう積極的になっても良い投資家なのです。
反面、われわれはその1日多くの部分を他人の仕事で費やさないとご飯を食べていけません。その分、銘柄調査にあたる時間は少なくなってしまうといわざるを得ないでしょう。
そのような人が、どのようにして投資をしていけばいいか、「消極的投資家」の項を読めばある程度、安全を確保できた投資が可能でしょう。
また、消極的投資家が、積極的なリターンを稼ぐにはどうしたらいいか、その部分はバフェットやリンチの著作に触れることで多くをカバーできるでしょう。
自分が「消極的」か「積極的」な投資家のどちらに当たるかを考えていくのは、自分の投資環境を踏まえ、自分の投資の方向性を考える、非常にいい経験になると思います。
まず、汝自身を知らないといけんのですよ
なお、内容的に優れているのは、第17章「特別な四社の例」と第18章「八組の企業比較」はポイントを押さえた銘柄の比較分析の基本形です。
この二つの章を鉛筆を持ってベンの説明を追いながら読み込むだけで、比較分析のすばらしい練習になるでしょう。
馬鹿げた値段、馬鹿げた銘柄、馬鹿げたやり方(ほぼ株価だけで判断)での投資を行えなくなること、間違いないです。

賢明なる投資家のその他
ちなみに第一版は1949年。50年以上の前の本を読んでみましたが、未だに内容が通用しています。なお、日本語版は2000年に初版が出版され、おいらの手元にあるのは第7版です。それだけ読み続けられている本なのです。
ちなみに値段は3,800円の税。この驚くべき値段にもかかわらず版を重ねているのですから、内容は優れていると考えます。もしあなたの本棚に読まなくなったウンコ株本が3冊あれば、あなたは賢明でなかった、とわたしはいうでしょう。
はい、わたしは賢明ではありませんでした。賢明>>>>>>>>>>>>>>ウンコ*3、です。
今の持ち株の配当が出たら、大切な配当が飲み食いに変わる前に購入しておくことを薦めます。
おそらく、この「賢明なる投資家」を超える内容の株式書籍は、そうそう出てこないでしょう。わけのわからないウンコ株本を買うよりも、こちらを断然薦めます。この少々キャッシュはかかる購入行為は、つまらないガラクタを数冊買うよりもはるかにあなたに便益を与えるでしょう。
これはバフェットの銘柄の選択にも繋がりますね^^;
「賢明なる投資家」には、おまけにバフェットのエッセィ「グレアム・ドッド村のスーパー投資家たち」という寄稿文が補講として付いて来るので、是非、目を通しておけばと思います。コイン投げとオラウータンの比喩はなかなか核心を突いていますよ。
本書を読めば解りますが、グレアム・トッド村の住民はそれぞれ別個のポートフォリオを持っていながらも成功したというのが、非常に印象的でした。
そう彼らは、互いに違う株式で元本を運用しながらも、すばらしい成績を上げたのです。この事実は、証券市場から金を抜きとることについて非常に示唆的ではないかと思います。
正解はひとつではない、ということを。
あと、有名なミスターマーケットの例えも掲載されています。市場というものをこう表現されれば、こいつに毎日付き合うことがいかに馬鹿げたことかはっきりするでしょう。それは小学生でも理解できることでしょう。

賢明なる投資
最後に「賢明なる投資家」で一番印象的な一文を。
1968年に8ドルあまりを支払ってこの株を買ったバカども達は、この会社の歴史や過去5ヵ年の収益記録、(非常に低い)資産価値について何も知らなかったのだろうか?
支払った金に対してどれだけのものが得られるか−というよりも、得られないか(※1)−について何らかの認識があったのだろうか?
彼らには自覚があったのだろうか?
愚かとしか言いようがなく、ぞっとするほど広範に及んでいるお決まりの破滅的な投機行為が、この手の投資媒体を主役に常に繰り返されることに対して、ウォール街の人々はなんら責任はないのであろうか?
タイムマシーンがあるとしたら、必ずこの文をメモってかつての自分に渡すでしょう。嗚呼、今日も塩漬け株が醗酵していい匂いがしています。
※1 HAHAHAHAHAHHAAHA!!本書で一番爆笑した箇所です。

雑文
なお、この賢明なる投資家の姉妹編として、「賢明なる投資家−財務諸表編」がありますが、これに4,000円弱を出すくらいなら、古本屋に行って簿記か経理の古本を大量に買い込んだほうがはるかに費用対効果のある学習ができるでしょう。
基本的に「賢明なる投資家−財務諸表編」は値段分の価値はありません。この本を買うことはあまり賢明ではありません。おそらくグレアムも安全域が低い、と言うでしょう。
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