・証券の分類

グレアム著「証券分析」の第1部第5章「証券の分類」についての雑考。

Section− 伝統的分類には反対
まずは、基本的な証券の分類からです。

ちなみに知性とは、定義し、分類することでもあります。証券の分類も、重要な勉強ですので、しっかり見ていきたいと思います。

さて、基本的な証券の分類としては、「債券」と「株式」に大別されたあとで、株式は「優先株」と「普通株」に分けられます。

こうした証券の分類は法的立場・証券の法的区分からの分け方です。つまり、債券であれば、債券に対する一定の優先請求権を持っており、会社が潰れてしまっても、負債の債券割合に応じて、会社の資産を求めることが法的に可能なわけです。

一方の株式は、大きなリスクがある分、オーナーとしての利益を享受できます。もちろん、オーナーなのですから経営の責任(有限)をとらねばなりません。そのため、会社が潰れてしまえば、残った資産に対しては1円も請求できないわけであります。ま、早晩に1円か2円で売るしかありません。

まとめれば、債券は元本に対する安全性が高く、株式はリスクは伴うも投機的な利益を得ることはできるというわけです。

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しかし、グレアムは、上記のような伝統的な、言うならば教科書的な証券の分類の仕方について強く反対しています。

たとえば、優先株というのは株式の一種ではあるけれども、優先的に利益(配当)の分配や償還ができる以上、投資というカテゴリーにおいては、債券に分類されるべきであると述べています。

「優先株の保有者は形式的にはその会社のパートナーまたはオーナーであるかもしれないが、当市と気体の目的から見ると債券保有者に似ている。」

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また、「債券」という言葉の罠に引っかからないように、グレアムは述べています。多くの人が、「債券」=「安全」という公式を頭からどっぷりとつかっていることにグレアムは看破しています。

債券でも大やけどをする!債券でも痛い目に遭う!

債券でも大損をする!

ことをグレアムはきちんと指摘しています。

債券とは、何か特別な保証があるわけでもないのです。この点、根本的な誤りが溢れているとグレアムは言います。

「・・・債券という形態を悪用する証券発行会社が、たまたまいなかったという偶然な結果に過ぎない・・・」

結果的に、これまでは安全であったというわけです。

債券という名称であろうと、

「安全性とは債務者である当該発行会社の元利返済能力そのものであり、安全性の度合いはその能力によって100%決まる」

のです。

ですから、資産や収益力のない会社の債券は、こうした企業の株式同様にまったく価値がないのです。

本当にその通りです。何ゆえに、この単純な真理が世に流布されないのでしょうか。大きな意図さえ感じますね^^

上場企業であっても、計画的な倒産というものはあります。

「新興企業の多くの債券はその株式同様に安全ではなく、それゆえに魅力にも欠けるものである」とはっきり言い切っています。

魅力に欠ける理由をグレアムは、「元利の請求権は持つが、将来の利益の追求には限界がある」と述べています。

当たり前といえば当たり前で、「債券」という見かけにだまされず、字面に惑わされずにその本質に迫れば、株式同様に高いリスクを有しているのに、受け取るのは「利息」のみだからです。

「債券の形態は、安全性と同一視できない」・・・まさに、基本の基本であると考えます。

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・従来の分け方では無力

グレアムはきっぱりと、「名称だけでは、その証券の特徴がわからない」と述べます。

標準的な証券の特徴を、「証券分析」では、以下にまとめています。

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@ 債券の特徴

  イ.一定期日に一定の利息を受け取る無条件の権利

  ロ.一定期日に一定の元本を償還される無条件の権利

  ハ.当該企業の資産や利益に対する請求権、議決権はない。

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A 優先株の特徴

  イ.普通株に優先して表示額の配当を受ける権利

  ロ.解散に際し普通株に優先して表示額の元本を受け取る権利

  ハ.普通株が持つ議決権がない

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B 普通株の特徴

  イ.債務の返済と優先配当を差し引いた後の比例分配権

  ロ.優先支払額を差し引いた後の利益に対する比例持分

  ハ.比例的な議決権

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以上のように、証券分析ではまとめていますが、まったく教科書どおりの基本的なまとめ方となっています。

おそらく、多くの方の証券の分類は、上記のようになっているのではないでしょうか。

しかし、グレアムは言います。

「最近では、こうした標準的な特徴からかけ離れたさまざまな証券が数多く出回っている」、と。

1937年度において専門家からそう指摘されているのです。

当時から、たとえば、収益社債、転換社債・転換優先株、ワラント付き社債、優先権付き普通株、無議決権普通株などなどが発行され、投資家に販売されていたわけです。

それ以外にも独特の特徴を持つ証券がゾクゾクと発行されているとグレアムは指摘し、巻末の資料にその一覧を載せています。

目を通してみると、ある種の証券事件・不祥事のときに目にするものが多いなあというのが実感です。

これまで起きた事件を思い出し思い出ししながら読んでみると、フムフムとうなづけるかと存じます。

たとえば、特定日の株価で償還か株式の振り替えかを選べる債券(ファンド)があって、その特定日を狙い撃ちして市場を操作した証券会社の不祥事等々です。

独特の証券はそのユニークさゆえに、事件に、損失に巻き込まれやすいともいえるでしょう。その商品性をしっかり把握していないと、大怪我をするというわけです。

こうした事情を踏まえ、グレアムは、「証券の保有者や購入者にとって、リスクとリターンがどのようであるか」を元に証券を分類すべきと主張します。

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・新しい証券の分類

グレアムは、本文中で新しい証券の分類を提唱していますが、ここでは、簡単でわかりやすい形のみを示します。

@ 投資適格の債券・優先株

A投機的な債券・優先株(転換社債や、二流の上位債券)

B普通株

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@の証券の目的は元本の安全性で、インカムゲインを得ることが目的でしす。

Aの証券は、将来的に価値が変動するために、インカムゲインを得る傍ら、キャピタルゲインを得ることができます。ロスの発生する可能性もあるが、キャピタルゲインのチャンスで補えることもできます。

とはいえ、@とAの区別は、個人的な判断に委ねられてきます。というのも、デフォルトや急な繰上げ償還があれば事情は変わってくるので、境界線はかなり曖昧となるためです。

最後の、Bの普通株は、通常の株のみを指すのではなくて、債券、優先株等、どんな名称であれ、普通株の性質を有するものは、全てBに分類します。

グレアムは具体的な証券の例を引いていますが、ま、それは本文で御確認をば^^

同様に、また、グレアムは、AとBの分け方も、不明確とならざるを得ないといいます。

ここでも、具体例を引くのですが、日本ではまだ優先株取引はほとんどの個人投資家には縁のない話なので割愛します^^

さて、最後に、グレアムは、「証券の分類基準は、その名称にあるのではなく、その証券特有の内容と投資家の見方という、実際上の基準に基づくべきである」、と述べています。

また、「重要なことは、法律的に要求できることではなく、将来的に得るもの、購入した時点で得られるものを基準に見ていくべき」とも述べています。

今もそうですが、今後、さまざまな金融商品が販売されることでしょう。まさに、手練手管です。安全といわれている投資信託でさえ、株を買っているものもありますし、また、証券の購入者が、どれほどのリターンを求めているかでも、「買う証券」の分類は変わってくるわけです。

なんと宣伝されようが、担当窓口に言われようが、自分の買うべき証券をしっかり把握することが、損失を受けない最も重要な作業であると、グレアムは言っているように思います。

法律で決まっているから安心、保証が付いているから安心、ではないのです。法で決まっていて求償できても、元本の1割しか返ってこないこともありましょうし、保証を当てにしたらとんずらこかれたのも、よく耳にする話です。

証券の分類は、今、自分が何をしているのか、何を求めているのかを確認する作業でもあるわけです。

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