・証券分析の数量的要因と質的要因

グレアム著「証券分析」の第2章「証券分析の数量的要因と質的要因」についての雑考。

Section−4つの要因
証券分析の一般的目的を、グレアムはこう述べています。

@ 特定の目的を満たすには、どの証券に投資すべきか。

A 当該証券を購入すべきか、売却か、保持か。

上記ふたつの問題に答えるためには、4つの要因を考慮しなければならないといいます。

1:選択する証券
2:購入価格
3:投資時期
4:投資家

グレアムは簡単に、こう述べています。

証券投資の問題は要するに、「Iという投資家が、Tの時期に、P価格でSという証券を購入(売却・保持)すべきか」ということなのです。

投資家についてグレアムは、こう注意しています。

「あらゆる証券の投資において真っ先に考慮しなければならない問題である」と。

つまり、一般の若いビジネスパーソンには魅力的でも、寡婦にとってはどうなのか、という投資適格の問題があるわけです。

そして、こうした社会的位置・身分のほかに、能力・教育・性格・好みも重要なファクターであるといいます。

「自分にとってどうなのか」を考えることは、証券投資において基本的なことだとわたしも考えます。

大切なのは、買おうとする株式が自分に合うものか(よく知っている企業なのか、事業なのか)どうかなのです。

とはいえ、これらの「個人的」なことは、半分は大事なわけです。

経験があれば、銘柄は何でもよい、何時買ってもよいというわけでもないわけです。

グレアムは次いで、投資時期について言及しています。

「投資時期はさまざまな点で分析結果に大きな影響を及ぼす」と。

簡単にいえば、ある証券でもよかったり悪かったりするわけです。来期になれば、これまでの好決算を吹き飛ばす赤字になるかもしれません。

また、そのほかの災害、戦争、テロなどで、経済環境・経営環境が変化することがあります。

グレアムは、証券分析は平時で有効な手段であると述べますが、環境の変化を無視するのもいかがなものか、と述べます。

わたし個人としては、よかったりわるかったりするもの、バランスよく期間のデータを集めフラットに眺めるべし、と読みました。

「これまで」と、そして「これから」も、無視するわけにいかないわけです。

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さて、グレアムは、4つの要因のうち最も大切な点として「購入価格」を挙げています。

これは、バフェット流に慣れ親しんだ人なら即解でしょう。

よい株でも、購入時期を間違えば散々な目に遭うわけです。いい企業を当てることができても、買う値段を間違えば投資は失敗です。

いい大根を買っても、1万円という値段で買うのは、良いこととはいえなしでしょう、というわけです。

そして、最後に残った要因は、「選択する証券」です。

これは言葉遊びに見えなくもないのですが、実に重要なことを述べているように思います。

・どの証券を、いくらで買うか。

・どの企業に、どの条件で投資するか。

非常に示唆に富んでいるかと思います。というのも、両方とも終着点は同じだからです。最終的には、株式を買い、売ることで利益を出します。

しかし、この両者は似て非なるものがあります。まず買うありきか、それとも買うスタンスありきか、と読むことができます。

グレアムは当節の締めとして、証券分析の基本的な要因を、全体的にバランスよくまとめています。

曰く、「投資する条件に応じて、購入価格、投資する証券、その企業の地位や業績を決定する」のが、証券分析というわけです。

実に堅実、堅牢な考え方です。

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Section2−企業と投資条件

まず、簡単に不利な投資の条件例と、有利な投資の条件例が載せられています。といっても、一読すれば、何でこんな商品を売るの?という例です。

特に不利な投資条件例は目玉もので、誰が買うのだろうか訝るほどです。引き出される教訓というのは、簡単にいえば「なぜ」です。

どうしてそういうことを発行企業はするのか、意図がある程度クリアにならない限りは、飛びつかないほうがよいというわけですね。

さて、グレアムは面白い投資原則を述べています。それは、初心者向けの原則とプロの原則です。

@ 初心者向けの原則
「2流企業の証券に絶対にお金を投じてはならない」

A プロの原則
「すべての証券はある値段では安いかも知れないが、別の値段になれば高くもなる」

このふたつの原則は、丸暗記しておけばいいでしょう。

また、折衷案ですが、セミプロならば、準1流の企業を適正な値段で買う」くらいでしょうか。我ながら中途半端^^

バフェットは、1流企業を安く、でした。よくやったものです。

さて、投資というと難しくなるので、上手に比喩が用いられています。

投資といえども、ペンキや時計を買う場合と同じであると、本文中では述べています。商品を買うのと同じというわけです。

グレアムは、@の初心者の原則の、超一流企業のみに投資を限定することについてこういっています。

「未熟な投資家のそうした投資スタンスには、最も人気のある銘柄(*)が最も安全であるという理由もさることながら、ほかの投資法ではリスクが大きすぎるということもある

* 安定し利益も出て、将来性も見込まれている、言葉の意味そのままの人気企業株式です。熱狂株式ではありません。

株式の評価は、まず人々の評価です。この人の評価ほど変わりやすいものはありません。人のうわさでさえ、49日といいます。1月半強しかもたないわけです。

また、企業それ自体の経営環境も変容します。本文中では、2年で環境が様変わりし、収益性が疑問視され、簿価以下に売り込まれた企業が言及されています。

商品の売り買いの例を用いれば、初心者は、商品の価値を正しく見抜けないのだから、手を広げずに、1流だけを相手にするほうが、リスクが少ない意味で、正しい戦法といえる。しかし、1流といえども、大きく状況はかわることもある。だから、1流以外の不人気商品にも目を向けていないといけないというわけです。

投資の世界に絶対はないといいます。グレアムは本文を「独立した批判的な立場を、決して崩してはいけない」と〆ています。

投資とは先ほど述べたふたつの原則を、行き来するものであるなぁと強く思いました。


Section3− 証券分析の数量的要因と質的要因

グレアムは、証券分析には、企業の分析も含まれると述べています。当然でしょう。こうした分析は限りなく詳しく分析することができる、とも述べています。

たとえば、ある株式投資関連のBBSにて、ケンケンガクガクの議論が行われていました。議論のテーマは、客一人当たりの売上高でした。議論の主体となっていた人たちは、実にそういった面に詳しく、労務管理の面、商品の原価の観点、果てには店長の裁量権まで考慮に入れつつ、議論をしておりました。

経営コンサルタント並の詳細な分析を行っているわけです。買収する側であるなら、ここまでの詳細な分析を加えるべきでしょう。しかし、投資という面からするなら、ここまでの分析はいるのだろうかという疑問は残ります。

グレアムはこの点、バランス感覚が必要であると看破しています。瑣末なことに囚われるな、また、ほかごとを調べているがゆえに重要な情報を見落としてしまうともいいます。基本の基本といえるでしょう。

また、分析する企業のタイプも十分に考慮に入れるべきだと言及しています。本書では石油会社を例に挙げています。石油価格が将来にわたって変動することもある以上、これまでと現在のデータはそれほど信頼が置けないといっています。

わたしの知る範囲で、同じようなことを経験しました。それは、エネサーブという企業です。この企業は、重油を使うコージェネ設備の販売・メンテが主業務だったのですが、この空前の原油高で事業が成り立たなくなりました。これまで実によい投資数字を出していたので、驚きました。バフェットも述べていますが、やはり株式投資は、自分の知りうる範囲でしかできないものだと、実感します。

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企業の分析は、数量的要因と質的要因とにわけて考えると便利であると、グレアムは述べています

。数量的要因は、バランスシートなどの財務書類から入手できるデータです。質的要因とは、企業の特質に関するデータです。具体的には、産業界における地位、営業の特徴、経営陣の能力や、業界そのものの将来の見通しまでが含まれます。

グレアムは、こうした多種多様で、さまざまな見解があり、人によって信頼性の異なる情報についても、しっかり判断できるようにならないといけないといいます。(アナリストにとっては、ですが^^)

数量的な要因の分析は、まだ容易であるといえます。財務上の数字は公開されているため、入手は簡単です。バフェットのいうように、ROEや一株あたりの利益を10年分も集めることができれば、かなり正確にその企業の実像を浮き彫りにできます。

しかし、なかなか難しいのは、企業分析における「質的要因」です。グレアム這いいえて妙な表現をしていまして、、、

「一般の人々はその企業が「優良企業」かどうかについては明確な考えを持っている。そうした考えは、その企業の業績、協会におけるその地位に関する知識、または推測や単なる思い込みなどに基づいている」

単純に、みながそう思い込んでいる優良企業とは多いものです。かつては、精糖や石炭の企業は時代の花形でしたが、今となっては技術革新や産業構造の変化によって、いまはもう見る影もありません。グレアムは本文中で、景気不景気によって企業の評価はコロコロ変わることを、鋭くしています。

「本当に優良か?」−これが質的要因分析の注意点のひとつです。

質的要因分析の2番目の注意点を見ていきましょう。質的要因の中で重要なのが経営能力ですが、これを見極めるのは実に難しい、とグレアムは述べます。バフェットの名言に「馬鹿でも経営できる企業を買う」と言っていますが、こういう点にもグレアムの影響が見られます。

計るのが難しいのは、それ自体に客観的な基準がないことだけでなく、過大に評価される点に、グレアムは注意を喚起しています。

つまり、優れた経営能力で業績が上がった場合、企業の業績について市場で評価が与えられます。そして、次いで、業績アップの手腕たる経営能力が上乗せ評価されるというのです。業績アップと経営能力は、裏表の関係でもとはひとつなのですが、市場ではダブル評価され、異常な高値がつくと、グレアムは述べます。

こうした例はたくさんあります。ある企業の業績がよいと、よってたかって分析した記事が雑誌や新聞を埋めます。そうすると、経営能力が高いので業績が上がったのだと好材料視されるわけです。経営者がスター扱いされマスコミの露出も増えます。とはいえ、業績アップの大概は経営環境が好転したためであって、その企業だけでなく同種の企業も同じ程度の増収増益を達成しているものです。いかに、露出が高い点から経営能力を評価するのか危険であるか、わかるかと存じます。


Section4− トレンドについて

証券投資の雑誌やニュースでは、「トレンド」という語句がよく使われます。グレアムは、1932年の時点で、この流行語であり誤解の多い、「トレンド」という言葉について警句を鳴らしています。

危険なのは、「証券市場では、それを更に押し進めて、過去のトレンドを未来にまで延長することで将来の収益を予測し、これをその企業の評価基準とする傾向がある」と、グレアムは述べます。

「こうしたプロセスでは、それなりの数字が使われるため、多くの人々はそれが数学的に正しいものと錯覚してしまう。しかし、過去のトレンドは事実であるが、将来のトレンドは単なる推測でしかない」と切り捨て、大雑把な手がかり、その企業が良いか悪いのかを占うひとつのヒントであると、将来の収益トレンドについて述べています。

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「トレンドを重視すると、過大評価や過小評価といった間違いを犯す」

グレアムのいわんとすることは、ようくわかります・・・。

グレアムは、トレンドをいかに数字の装飾がなされていようとも、それは「質的要因」として、慎重な分析と考察が必要だと結論付けます。わたしも、そう思います。

「トレンドを将来までに際限なく延長しがちである」「一見数学的に見える評価法も実際にはsん利敵且つ恣意的な要因に基づいている」

将来予測にもとづく企業分析には、グレアムの言うこの2点の注意をしっかり念頭に置くべきでありましょう。

また、この言葉も憶えておくと、馬鹿げた過ちを犯しません。

「トレンドとは、正確な予測という形をとった将来の見通しである」と。

正確な予測というのも、不思議な日本語ですが、正確に見える見通しだからこそ、市場は一方に「極端に」動くものです。こうした場合、アナリストの能力を超えたものに、自分の分析結果が影響を受け、成り行きが委ねられることになります。

そこで、グレアムは、「将来の変化の可能性」については、そこから利益を得るのではなく、「身を守るように」使いなさいと述べます。

将来の予想やトレンドに基づいた投資判断は、危険な判断をしているのだということを十分に承知しておくべしと述べます。

グレアムは、企業の安定性とは、業績というよりかは、主にその企業の性質を反映したものとしています。

「安定した業績を上げている企業は、本来的には安定した企業であるといわれるが、以下の実例は必ずしもそうでないことを示している。。。」

本書では、その企業例が載っているのですが、利益を上げているからといって即断に「安定」とは結論付けられないわけです。さも、ありなんだと思います。証券分析の盲点を、しっかり理解しておかないとと改めて思いました。

さて、本章最後のページ(69ページ目)には、要約がなされています。あたりまえのことが書かれていますが、読み直すと凄く吸収できるものがあります。是非、一読しておきましょう。